手掘り日本史





読み:てぼりにほんし
ジャンル:聞き書き集
巻数:1

内容
源義経、織田信長、坂本竜馬など多くの歴史上の人物とその時代を膨大な史料を基にして、すぐれた歴史観と豊かな想像力でとらえ、魅力あふれる明快な文体で描いて歴史小説に新しい地平をひらいた圧倒的な人気をもつこの作家が自らの小説について縦横に語り、発想の原点を説きあかした、興味つきない好著。

印象に残った一節
・日本人を考える上で、この祖父のように、頑固に自分の思想をもち続けているような人は、たしかに興味深いのですが、これはむしろ日本人的ではありませんですね。どちらかというと、廃仏毀釈のとき、興福寺の坊さんが仏像に対して態度を急変させたことなどに、日本人のちょっと皮肉な意味をこめたすばらしさ、を私は感じるんです。

・東北の部隊が強い。あるいは越後の部隊が強い。なぜ強いか。それは、太平洋戦争の終了ごろまでのその地帯には濃厚に封建的な潜在体制や意識がのこっていたからです。村々にはまだ昔の庄屋のような人が、地主なり村長なりの形でおりまして、これが実に権威があり、こわい存在だった。道で出会っても、わきによけて頭を下げる。その人が何かお上のお達しを伝えると、その人のことばが、そのまま国家権力の重みをもってしまう。ですから、よほどの反骨の持主でないかぎり、従順にならざるをえない。

・日本人というのは、本来が無思想なんです。あるいは本来が無思想なればこそここまでこられた、とも言えるのではないでしょうか。さらにはもう一方で、日本人がテクノロジーに関する秀才だからではないでしょうか。無思想で技術がある。

・私は、思想というものはありがたいものではなく、この本のどこかでも語っていますように、土木機械にすぎないものだ、と思いはじめているんです。思想の奴隷になっていてはどうしようもない。思想とは、自分たちの支配すべき土木機械だ、と開き直ったわけです。

関連ページ

  • 関連ページはありません

"手掘り日本史"へのトラックバック

トラックバックURL:

"手掘り日本史"のレビュー

(評価:4)
聞き書き形式の異色作品
レビュアー: shiba-ryo.com
2006-05-11
江藤文夫氏による「聞き書き(インタビューのようなもの)」に、司馬遼太郎が手を加えて一冊の本としてまとめた作品。
エッセイでもなく、対談でもない。やや変わった趣向の作品です。

異色とはいえ、司馬遼太郎の場合はどんな形であろうとその深い歴史知識と洞察、それらに裏付けられ、総合された史観と哲学が基底にあるため、期待を裏切られるようなことはまずありません。
さらに本書の場合、各項ごとに「私の歴史小説」「歴史のなかの日常」「歴史のなかの人間」「日本史と日本人」「わが小説のはじまり」といったタイトルがつけられているわけですが、それらが表す通り収録作はどれも日本の歴史、そして著者自身とその作品の深い部分について語られています。かなり読み応えがあります。(ある程度司馬作品を読んでいる人に限られるかもしれませんが)

なお、一番最後の「わが小説のはじまり」にて、司馬遼太郎自身が自分の作品の中で好きなものを挙げていました。

・おお、大砲
・外法仏
・殉死
・新選組血風録
・燃えよ剣
・国盗り物語
・竜馬がゆく
・峠

「坂の上の雲が入ってないのはなぜ?」という気もしますが、いずれも名作であり、戦国から明治までの日本史の流れが押さえられるという意味でもちょうどいい八作品だと思います。初心者の方には「司馬遼太郎基本八作品」としてこれらをオススメするのがいいんじゃないか、なんてことを思いました。


レビューを投稿する