この国のかたち




読み:このくにのかたち
ジャンル:随筆集
巻数:1~6

歴史小説で評論で対談でと、さまざまな形で「日本」を論じ続けてきた著者が、そのエッセンスというべきものを綴ったベストセラー

内容
(一)日本は世界の他の国々とくらべて特殊な国であるとはおもわないが、多少、言葉を多くして説明の要る国だとおもっている。長年の間、日本の歴史からテーマを掘り起し、香り高く稔り豊かな作品群を書き続けてきた著者が、この国の成り立ちについて研澄まされた知性と深く緻密な考察をもとに、明快な論理で解きあかす白眉の日本人論。
(二)この国の習俗・慣習、あるいは思考や行動の基本的な型というものを大小となく煮詰め、エキスのようなものがとりだせないか―。日本史に深い造詣を持つ著者が、さまざまな歴史の情景のなかから夾雑物を洗いながして、その核となっているものに迫り、日本人の本質は何かを問いかける。確かな史観に裏打ちされた卓抜した評論。
(三)革命をおこした国は倨傲になる。特に革命で得た物差しを他国に輪出したがるという点で、古今に例が多い。明治の日本人には朝野ともにその意識がつよく、他のアジア人にとって不愉快きわまりないものであったろう。―この国の歴史のなかから、日本人の特性を探り出し、考察することによって普遍的なものとはなにかを考える。
(四)国家行為としての”無法時代”ともいうべきそのころ(昭和初年から敗戦まで)の本質の唯一なものが「統帥権」にあると気がついたのは、『この国のかたち』を書いたおかげである。――最後まで、この国の行く末を案じ続けた著者が、無数の歴史的事実から、日本人の本質を抽出し、未来への真の指針を探る思索のエッセンス。
(五)「葦原の瑞穂の国は神ながら言挙げせぬ国」(万葉集)―神ながらということばは”神の本性のままに”という意味である。言挙げとは、いうまでもなく論ずること。神々は論じない。―神道や朱子学はわが国の精神史にいかなる影響を与えたか。日本人の本質を長年にわたって考察してきた著者の深く独自な史観にもとづく歴史評論集。
(六)巨星、墜つ―。1996年2月12日、十年間続いた『文芸春秋』の巻頭随筆「この国のかたち」は、筆者の死をもって未完のまま終わることになった。本書は、絶筆となった「歴史のなかの海軍」の他、書き言葉としての日本語の成り立ちを考察した「言語についての感想」「祖父・父・学校」などの随想、講演記録「役人道について」を収録。

目次
【一】 この国のかたち/朱子学の作用/”雑貨屋”の帝国主義/”統帥権”の無限性/正成と諭吉/機密の中の”国家”/明治の平等主義/日本の”近代”/尊王攘夷/浄瑠璃記/信長と独裁/高貴な”嘘”/孫文と日本/江戸期の多様さ/若衆と械闘/藩の変化/土佐の場合/豊臣期の一情景/谷の国/六朝の余風/日本と仏教/日本の君主/若衆制/苗字と姓/あとがき
【二】 紋/天領と藩領/婚姻雑話/土佐の場合/肥後の場合/華厳/ポンペの神社/金/カッテンディーケ/江戸景色/十三世紀の文章語/典型/無題/汚職/職人/聖/会社的”公”/一風景/師承の国/ザヴィエル城の息子/GとF/市場/越と倭/ズギ・ヒノキ/あとがき
【三】 戦国の心/ドイツへの傾斜/社/室町の世/七福神/船/秀吉/岬と山/華/家康以前/洋服/「巴里の廃約」/「脱亜論」/文明の配電盤/平城京/平安遷都/東京遷都/鎌倉/大坂/宋学/小説の言語/甲冑(上)/甲冑(下)/聖たち/あとがき
【四】 馬/室町の世/徳/士/わだつみ/庭/松/招魂/別国/統帥権(一)/統帥権(二)/統帥権(三)/統帥権(四)/うるし/白石の父/近代以前の自伝/李朝と明治維新/長崎/船と想像力/御坊主/日本人の二十世紀/あとがき
【五】 神道(一)/神道(二)/神道(三)/神道(四)/神道(五)/神道(六)/神道(七)/会津/大名と土地/鉄(一)/鉄(二)/鉄(三)/鉄(四)/鉄(五)/室町の世/連歌/宋学(一)/宋学(二)/宋学(三)/宋学(四)/看羊録(一)/看羊録(二)/藤原惺窩/不定形の江戸学問/人間の魅力/あとがき
【六】 歴史のなかの海軍(一)/歴史のなかの海軍(二)/歴史のなかの海軍(三)/歴史のなかの海軍(四)/歴史のなかの海軍(五)
〔随想集〕旅の効用/うたうこと/声明と木遣と演歌/醤油の話/言語についての感想(一)/言語についての感想(二)/言語についての感想(三)/言語についての感想(四)/言語についての感想(五)/言語についての感想(六)/言語についての感想(七)/雑話・船など/コラージュの街/原形について/祖父・父・学校/街の恩/源と平の成立と影響/役人道について

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  1. 上海ライフの達人 より:

    自己中心の中国人と他人の視線を気にする日本人
    この国のかたち〈1〉 文春文庫 司馬 遼太郎 (著) (1993/09) 評価:…

  2. 上海ライフの達人 より:

    プチ日本学を学んで、自分なりの日本観を身につける。
    この国のかたち〈2〉 文春文庫 司馬 遼太郎 (著)(1993/10) 評価:★…

  3. すばらしき新世界 より:

    105円の本達:司馬遼太郎「この国のかたち」
    「掘り出し物」これぞまさに105円コーナーの楽しみである。ご存知、司馬遼太郎最…

"この国のかたち"のレビュー

(評価:5)
日本人とリアリズム
レビュアー: shiba-ryo
2010-09-21
1986年から1996年まで続いた文藝春秋の連載コラムをまとめたもので、日本の歴史や文化を軸に、時事問題なども絡めて多岐にわたる内容を描いています。

一回あたり四百字詰め原稿用紙十枚という制約があるものの、「室町の世」というタイトルが巻を隔てて3回登場したり、神道などの大きなテーマは7回連続だったりと、制約もあまり気にせず、思うままに書いている感じ。また読者にとってもちょうどいい長さで読みやすいと思います。

「日本のかたち」という、恐らく常人には扱いきれない難しいテーマなのでしょうが、既に著者が主だった長編歴史小説を書き終えた時期でもあり、そのたぐいまれな知識と思想で、日本という国・民族の"型"の多くを、読者に伝えることに成功していると思います。


正直なところ、この長編連続エッセイについての感想を手短に述べるのは難しいので、ここでは"リアリズム"について書いてみます。

なおここでいうリアリズムというのは、「現実から目を反らさず、常に冷静な判断能力を持続させること」と定義します。

リアリズムの反対は理想主義で、特にひどいものは狂信主義になったりします。理想をもつこと自体は良いことですが、現実から乖離した理想主義は、自身を滅ぼし、まわりを不幸にします。
現実的で冷静な判断能力は、得難く、失いやすいものです。ちなみに日本人がこれを失いやすいのは朱子学の影響が濃いと、本書で語られています。

その最たる例が昭和初期から敗戦までの日本であり、国全体がリアリズムを失って暴走していた時代です。著者が、指導者よりも八百屋の親父のほうがリアリズムがあると評した時期です。
また戦後ではバブル期に国全体が狂乱し、失われた10年のきっかけをつくりました。

なお幕末の一時期における過激な尊王攘夷思想と行動も、現実から乖離した狂信的なものでした。が、倒幕後はあっさり攘夷を捨て、日露戦争までの40年間はほぼ冷徹なリアリズムで国が動いていた時代だと思います。
日本的な理想主義・狂信主義も、それが政治によってコントロールできていれば大きな問題にはならないようです。


つまり日本は、自律的で現実主義な政治家、リーダーたちによってコントロールされる必要がある。

ではそうした政治家を生みだすには、どうすればいいか。

結局、国民一人一人が自立しなくては、そうしたリーダーを生みだす土壌ができない、というところに行き着くと思います。まさに福沢諭吉の学問ノススメです。

福沢諭吉の偉大さを思い知ると共に、明治後150年経っても、まだまだ日本は国も民族も未熟だということを思い知らされます。


同時に、個々人が自立し、自律的で冷静でいるということが、いかに難しいかということもわかります。

特に自己を冷静に見つめることは難しいことですが、勇気を持って己と向き合うことが絶対に必要だと思います。

そして司馬遼太郎はそれを期待し、本書をはじめとした多くの著作を残すことで、その手助けをしてるんじゃないか。

そう感じました。



21世紀は個人の時代だと思っています。
GoogleもYahooも個人から始まりましたし、ブログやホームページなどを使った個人の情報発信の影響力がどんどん大きくなっています。
自律的な日本人の声が大きくなり、広まって、その精神が伝播していけば、日本にもやがて強固なリアリズムが根づくのではないか、とひそかに期待しています。

また自分も日本人のリアリズムの定着に少しでも貢献できるよう、コツコツと司馬作品を読み、精神的にも経済的にも自立を保ち、常に冷静な判断ができる人間になれるよう、努力をしたいと考えています。


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