韃靼疾風録




読み:だったんしっぷうろく
ジャンル:歴史小説
時代:江戸時代
巻数:上、下

世界史を切り開く動乱に翻弄される韃靼公主アビアと平戸武士桂庄助を中心として様々な人間が織りなす壮大な歴史ロマン。

内容
(上)なぜか九州平戸島に漂着した韃靼公主を送って、謎多いその故国に赴く平戸武士桂庄助の前途になにが待ちかまえていたか。「17世紀の歴史が裂けてゆく時期」に出会った2人の愛の行方を軸に、東アジアの海陸に展開される雄大なロマン。
(下)「野蛮の勃興こそ歴史の跳躍台である」。文明が衰退した明とそれに挑戦する女真との間に激しい攻防戦が始まった。世界史を切り開く動乱に翻弄される韃靼公主アビアと平戸武士桂庄助を中心として様々な人間が織りなす壮大な歴史ロマン。

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"韃靼疾風録"へのトラックバック(2件)
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  1. ”日々徒然” 副題:「賢明なる投資家」への長い道のり より:

    『韃靼疾風録』
    久しぶりに小説ネタです。投資本の合間を縫って読み進めていた、『韃靼疾風録』(司馬遼太郎著)を読了。(↑文庫の画像がどこにも無かったので全集の画像で代用)感想はこ……

  2. タヌキおやじの日々の生活 より:

    司馬遼太郎「韃靼疾風録」上下巻を読破!!

    今日の東京は、昼間、雨が降った後、陽が射したらと思ったら、また、雨が降り始め、夕方は異常に寒かった。
    咽喉が痛くて、鼻水が出てくる。
    風邪をひいたようだ。

    韃靼疾風録〈…

"韃靼疾風録"のレビュー

(評価:5)
東アジアの構図
レビュアー: shiba-ryo.net
2009-03-26
舞台は17世紀の東アジア。主人公は平戸藩の下級武士、桂庄助(庄助は架空の人物)。
ひょんなことから庄助が日本を飛び出し、中国・朝鮮・満州を股にかけて活躍するという、現実離れしたというか、映画やドラマのような劇的な内容です。上巻は庄助が平戸を出て朝鮮、明を経て女真地域に到達するまで。下巻では清の勃興と明の滅亡までを描きます。

冷静に考えると無茶苦茶な話ですが、読みはじめるとそうした点も気にならなくなり、どんどん引き込まれていきます。
個人的に架空の人物を主人公にした司馬作品はあまり好きではないので特に期待せずに読み始めたのですが、いい意味でそれを裏切ってくれました。
「梟の城」や「風の武士」などは歴史の舞台から登場人物がやや浮いてしまっているような感がありましたが、この作品は東アジアという多様な文明・文化が入り交じった広域で、しかも明末の激動期が舞台になっているためか、架空の登場人物たちも作品の中にぴったりおさまっているような感じがします。庄助が実在の人物なのでは?と思えるくらいの自然さがありました。

上巻はそうした劇的なおもしろさに加え、日本・中国・朝鮮・満州の文化を深く描いており、現代まで続く東アジア諸国の関係が見えてきます。
そして下巻では、ヌルハチ・ホンタイジ・ドルゴンら清帝国の創世者たちの活躍をメインに、明の崩壊と清の勃興の過程を詳しく追っていきます。"夷"である清が"華"である明を倒す。エネルギーと躍動感に溢れた描写はまさに"疾風"です。

そしてラスト。
同ジャンルの小説で「大盗禅師」というのがあってこちらもすごく面白かったんですが、尻切れトンボな終わり方が残念だったので、この作品も最後が近づくに連れて少し不安でしたが、「韃靼疾風録」はとても"日本的"で満足のいく終わり方でした。

司馬遼太郎が書いた最後の歴史小説だけあって、完成度は非常に高いです。納得の一冊です。
(評価:5)
司馬遼太郎の異色作
レビュアー: Ito
2005-08-01
この作品、司馬遼太郎の長編の中ではかなりの異色作だと思います。

まず、物語の舞台のほとんどが中国であること(日本人がまったく登場しない『項羽と劉邦』は別として)。それに、他の司馬遼太郎の長編でよく出てくる「日本とは?日本人とは?」というテーマがあまり前面に出ていないように感じます。

この作品では明人(中国人)・女真人・朝鮮人・日本人の民族としての特徴が語られつつ、主人公の桂庄助を通してそれぞれの民族の中で際立った人物が描かれています。

例えば明人(中国人)は個人の利を優先し、朝廷に対する忠誠心はまったくないと語られつつ、滅び行く明朝のために、その死まで異民族と戦った袁崇煥や鄭成功。

野蛮だが素朴で正直な民族とされる女真人からは、権謀と術策の限りを尽くして女真人をまとめたヌルハチ。

儒教(朱子学)にもとづいた原則論のために空虚な空論を続ける朝鮮人のなかで、一人現実的な政策を選択し、女真人と結ぼうとした朝鮮王。

これらの登場人物の中で、”死を恐れない倭人”として登場する庄助は、歴史の表舞台で活躍するわけでもなく、これらの人々の間を漂い、最後には中国に渡るきっかけとなった女真人の妻とともに、亡命明人として鎖国日本へと帰り着きます。

私は一通り司馬遼太郎の長編を読んだあと、最後にこの長編を読んだのですが、どの長編とも異なる印象が残る良作でした。


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