大盗禅師





読み:だいとうぜんし
主な登場人物:浦安仙八、大濤禅師、由比正雪、鄭成功、ほか
ジャンル:歴史小説
時代:江戸時代
巻数:1

徳川幕府の転覆と明帝国の再興を策して、怪僧と浪人たちが暗躍する。全集にも未収録の伝奇ロマン長篇が三十年ぶりに文庫で復活!

内容
大阪落城から三十年。摂津住吉の浦で独自の兵法を磨く浦安仙八の前に、ひとりの僧が現れる。妖しの力をあやつる怪僧と、公儀にに虐げられる浪人の集団が、徳川幕府の転覆と明帝国の再興を策して闇に暗躍する。これは夢か現か――全集未収録の幻想歴史小説が、三十年ぶりに文庫で復活。解説・磯貝勝太郎/高橋克彦

印象に残った一節
・たとえ小禄でも禄の多寡がなんであろう。人間の欲するのは禄ではなくて”属したい”ということなのである。
・「戦いに勝つというのは、その方法さえ確立すれば困難なことではない」と、鄭成功はいった。
・「左様、禅師は有害です。徳望が失せ、人心が散った人物というのは、きわめて有害。当の本人がおのれを知って山林に隠遁するというなら害はありませんが、古来多くはそうではない。市井に残る。自分が作った組織に未練がある。返り咲こうとする。禅師のあの姿が、それです。」

関連ページ

  • 関連ページはありません

"大盗禅師"へのトラックバック

トラックバックURL:
  1. ”日々徒然” 副題:「賢明なる投資家」への長い道のり より:

    『大盗禅師』 司馬遼太郎著 読了
    投資本の合間を縫って、司馬遼太郎作品の残党狩り中です。本日『大盗禅師』読了。司馬遼太郎のかなり初期の作品のようで、他の作品とはかなり趣が違います。初期の作品とい……

"大盗禅師"のレビュー

(評価:5)
空想と現実が共存する異色作
レビュアー: shiba-ryo.com
2005-06-17
摂津住吉に生まれた、非凡な剣術の才を持つ浪人浦安仙八が、大濤禅師と出会って徳川転覆を謀る秘密結社で暗躍し、果ては中国にわたって明帝国再興を目指す鄭成功の下で将軍として頭角を現していく。という作品。

物語は、成人したばかりの仙八が、浪人という身分がいかに世間で肩身が狭く、居場所がないものかという現実を目の当たりにするところから幕が開け、そして厳しい現実に直面した直後に怪しい外道の術をあやつる大濤禅師と出会い、思いもよらぬ人生を歩み始めます。

冷静に考えるとかなりはちゃめちゃな内容で、チャンバラ、仙術、妖術などの非現実的なアクションも随所に登場します。特に物語の導入部ではこうしたアクションが多く、最初は「これはファンタジー小説か?」と疑ってしまいましたが、そこは司馬遼太郎。ただのアクション小説で終わるようなことはなく、読み進めるにつれてむしろこうしたアクションが小説の味を引き立てるスパイスのように活きてきます。

なお、本作品では江戸初期の日本、明国の衰退と清国の勃興に直面する中国を舞台に、司馬遼太郎の人間観察、社会観察眼が特に光っていると思います。個人の心理や社会についての考察を、仙八をはじめ禅師、由比正雪、鄭成功、蘇一官といった作品中に登場する個性豊かな人物たちの言葉を借り、深く、するどく描いています。そうした一言一言にはさまざまな意味・思いが込められており、読んでいてさまざまなことを考えさせ、学ばさせてくれます。


空想と現実という相反するものが共存しており、最初はちょっと拒否反応があるが慣れてくると病みつきになる、という、やや"毒"のある内容だと思います。司馬作品としてはやや異色ですが、司馬ファンであれば間違いなく楽しめる一冊だと思いました。


レビューを投稿する