俄―浪華遊侠伝





読み:にわか―なにわゆうきょうでん
主な登場人物:明石屋万吉
ジャンル:歴史小説
時代:幕末
巻数:1

内容
〈わいの生涯は一場の俄や……〉どづかれ屋から身を起した不死身の万吉は、“金こそ命”のド根性と勘で、侠客明石屋万吉となり、米相場破り、果ては幕末維新の騒乱に、親分から侍大将となり、場当り的に生き抜く。その怪ッ態な男の浮沈を、独得な史眼でとらえた異色の上方任侠一代。

印象に残った一節
「智恵か」
万吉は、ふんと笑った。
「太融寺の坊主がぬかしたわい。智恵より大事なのは覚悟や、と。覚悟さえすわれば、智恵は小智恵でもええ、浅智恵でもええ。あとはなんとかなるやろ」

料簡ちがいや。
と、数日、ひきこもって思案した。一度使った才覚は一度だけ古くなるものだ。何度も使えばすりきれて使いものにならなくなる。
(才覚は、天神祭りの花火と同じやなあ)
とおもわざるをえない。
同じ趣向の花火がつづけざまいあがれば客が飽くのだ。飽けば客が散る。花火と才覚は、つねにかえてゆかねばならない。

「わいはなるほど、うまれて足掛け十三年にしかならへんが、それでも大人は大人や。本人がそう覚悟したら、大人や」

喧嘩も戦争もおなじことだ。恐怖と恐怖のくらべあいのようなもので、恐怖の量がより大きくなった側が崩れ立ってしまう。
要するに勝つも負けるも心理のなせるわざだといっていい。

「剣術ちゅうようなもんは、おのれが斬られる覚悟さえすわっておれば、たいていのやつに勝てる」
「斬られたらどないしまンねん」
「死ぬだけや」
「なるほど」

「わいが、どこかの御家中のお姫様を貰や、天下のお笑い草や。第一、わいの臍が笑いよるやろ。男には、やってはならんことがいくつかある。その大なるものは、笑いもんにならんということや」

悪いやつというのはそうであろう。生命力が人一倍つよく物事に欲望が強すぎる種類の人物でしかも思慮みじかく、欲望を手続きによって遂げようとせず、いきなりつかみ取ろうとする。そういう男が悪いやつというものらしい。

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    近所に買い物に出たついでにブックオフで古本漁り。で、一冊だけ購入。『俄―浪華遊侠伝』 司馬遼太郎著 講談社文庫図書館で借りた本もまだ読みきってないし、今まで買い……

  2. 手当たり次第の読書日記 より:

    『俄 ─浪華遊侠伝─』 司馬遼太郎
    司馬 遼太郎
    俄―浪華遊侠伝

    水無月さんのご紹介
    により読むことができました。司馬遼太郎の未読本!
    何で買ってなかったのか考えてみま……

  3. じゃんす的北京好日子 より:

    俄―浪華遊侠伝 今日は司馬遼太郎の誕生日
    今日8月7日は司馬遼太郎氏の誕生日です。私は司馬遼太郎ファンなので、今日はいくつか好きな司馬遼太郎作品を紹介したいと思います。最近「俄―浪華遊侠伝」を読み……

"俄―浪華遊侠伝"のレビュー

(評価:5)
最高の舞台に最高の役者が揃った、最高の俄
レビュアー: shiba-ryo.com
2006-02-22
即興的に演じる滑稽な寸劇。江戸時代、京都で、祭礼などに素人が演じたものが始まりで、江戸・大坂から地方に広まり、特に大坂で盛んに行われた。のちには専業の者も出、寄席・劇場に進出した。明治後期に衰退したが大阪・博多などでなお愛好されている。仁輪加。俄狂言。(三省堂提供「大辞林 第二版」より)

。。。

幕末から大正にかけて大坂で活躍した侠客、明石屋万吉。
十三歳の若さで父が出奔。自らの腕一本で家族を養う立場におかれた万吉が、必死の覚悟と持ち前の度胸と愛嬌、そして並はずれた忍耐力で大坂の名物親分にまでのし上がってゆく様子を描く。

司馬作品はどれを読んでもおもしろいが、これは並はずれて愉快痛快な作品。
登場人物は皆いきいきと描かれ、特に万吉たちの大坂弁での会話の応酬は小気味よく、まるで漫才を見ているかのようなおもしろさがあります。生粋の大坂人、司馬遼太郎ならではの傑作長編だと思います。非常に月並みな表現ですが、読んでいて元気にさせられる、そんな作品でした。

演劇風に書くと

舞台:激動の幕末期
主演:明石屋万吉
出演:やくざ者たち
   勤王志士たち(主に長州)
   佐幕家たち(新選組など)
   大坂の市井の人々
監督・脚本:司馬遼太郎

といった感じでしょうか。 最高の舞台に、最高の役者が揃った、最高の俄を、ぜひ一度味わってみてください。
(評価:5)
俄―浪華遊侠伝
レビュアー: Dr
2005-10-16

内容は面白いに尽きる。
主人公の明石屋万吉のような器の大きい人間になりたいと思った。
実在の人物のようだ。90歳まで長生きしたらしい。

 オレは大阪に住んでいるので、幕末から大正にかけての大阪が克明に描かれていて面白い。大阪に住んでいる人にはお勧めの一冊だ。天保山沖から長堀通りに当時の各藩邸が集中していたり、大阪の役人は当時から汚職体質だっただとか、物語の内容もさることながら当時の町の風情や風俗が描かれているので、物語とは別に新しい発見が出来る。

 司馬良太郎の小説はどれも面白いのだが、この一冊はとてもさわやかで『コテコテ』な格別の一冊である。


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