故郷忘じがたく候




読み:こきょうぼうじがたくそうろう
収録作:故郷忘じがたく候/斬殺/胡桃に酒

秀吉の朝鮮出兵で薩摩へ連行された朝鮮人の末裔、沈寿官一族を描いた表題作と他二編

内容
十六世紀末、朝鮮の役で、薩摩軍に日本へ拉致された、数十人の朝鮮の民があった。以来四百年、やみがたい望郷の念を抱きながら異国薩摩の地に生き続けた、その子孫たちの痛哭の詩「故郷忘じがたく候」 ほかに、明治初年、少数で奥州に遠征した官軍の悲惨な結末「斬殺」 細川ガラシャの薄幸の生涯「胡桃に酒」二編を収む。

関連ページ

  • 関連ページはありません

"故郷忘じがたく候"へのトラックバック(2件)
トラックバックURL:
  1. 街道をウロつく より:

    故郷忘じがたく候
     「あなた方が三十六年をいうなら、私は三百七十年をいわねばならない」。 韓国の若…

  2. 司馬遼太郎を読む より:

    「喜ばれる」基本に 薩摩焼15代沈寿官さんが個展
    薩摩焼の15代沈寿官さん(46)の作品展が25日、高知市帯屋町1丁目の……

"故郷忘じがたく候"のレビュー

(評価:4)
美しすぎる故の悲劇
レビュアー: shiba-ryo.com
2005-05-15
秀吉の朝鮮出兵で薩摩へ連行された朝鮮人の末裔、沈寿官一族にまつわる話「故郷忘じがたく候」
時勢を見る目のなさが災いし、斬首に処せられた長州藩士世良修蔵を通して明治初年の奥羽を描いた「斬殺」
細川忠興の妻ガラシャに対する異常な愛の形を描いた「胡桃に酒」

これら3編からなる短編集です。それぞれの編には関連性はなく、しかも表題作は紀行随筆調なのに対し他の2編は歴史小説になっているので、文庫として出版する際に無理矢理一冊にした感が否めません。が、そんなことはすぐに忘れてしまうほどに収録3編はいずれも秀逸で読み応えがあります。

中でも一番印象に残ったのが「胡桃に酒」。ガラシャの完璧なまでの美しさと聡明さが夫忠興による異常なまでの独占を招き、更に忠興の直情的な性格が災いして多くの悲劇が起こってしまう。ガラシャの短くて儚い、劇的な生涯が描かれた作品です。
「胡桃と酒(くるみとさけ)」というタイトルは、ガラシャと忠興の関係を食い合わせに喩えた司馬遼太郎流の表現で、思わずニヤリとしてしまうような巧さにセンスの良さを感じます。

他の二編も名作です。1時間~2時間くらいで読み終われる厚さなので、ちょっとした空き時間があるときにでもぜひ読んでみてください。


レビューを投稿する