馬上少年過ぐ





読み:ばじょうしょうねんすぐ
収録作:英雄児/慶応長崎事件/喧嘩草雲/馬上少年過ぐ/重庵の転々/城の怪/貂の皮

時代の流れの中で、置かれた状況の下で必死に生きた人物たちを描いた短編集

内容
戦国の争乱期に遅れて僻遠の地に生れたが故に、奥羽の梟雄としての位置にとどまらざるをえなかった伊達政宗の生涯を描いた『馬上少年過ぐ』。英国水兵殺害事件にまきこまれた海援隊士の処置をめぐって、あわただしい動きを示す坂本竜馬、幕閣、英国公使らを通して、幕末の時代像の一断面を浮彫りにした『慶応長崎事件』。ほかに『英雄児』『喧嘩草雲』『重庵の転々』など全7編を収録する。

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  1. 司馬遼太郎を読む より:

    江戸期の文人画家 田崎草雲108回目法要
     江戸時代の文人画家、田崎草雲(一八一五-九八年)の百八回目の法要が一日朝、足利……

  2. あしかが歩記 より:

    田崎草雲旧宅の紅葉(白石山房/ 草雲美術館)
    足利公園(水道山)のことをその昔は蓮岱寺山(れんだいじやま)と言ったそうです。先日、昭和天皇御巡幸の事などいくつか書きましたがここには足利藩士、幕末の勤王……

  3. 司馬遼太郎を読む» 司馬遼太郎ニュース » 江戸期の文人画家 田崎草雲108回目法要 より:

    [...]  草雲は江戸・足利藩邸生まれ。成人後は足利を拠点に活躍し、幕末・明治期の文人画の指導的役割を担った。司馬遼太郎さんの短編小説「喧嘩(けんか)草雲」のモデルとしても知られる。 [...]

"馬上少年過ぐ"のレビュー

(評価:4)
変転
レビュアー: 秋
2005-07-26
「馬上少年過ぐ」。この本は七つの短編からなります。

一つめは、幕末に革命的とも言える藩政改革を断行して武備を増強。
維新政府軍を大いに悩ました長岡藩の家老・河井継之助のエピソードを随想風に述べた「英雄児」。これは、同じく司馬遼太郎が河井継之助を書いた「峠」のダイジェスト版といったところでしょうか。出来栄えは「峠」の方が上だと思います。長岡藩と言えば、うちの国の首相が遠い昔に「米百俵」とか言ってた時のあの藩です。

次は「慶応長崎事件」。これは坂本竜馬がつくった浪人結社「海援隊」の隊員・菅野覚兵衛の起こした事件(?)を中心に、その周辺の人物を描いています。岩崎弥太郎(三菱創始者)・アーネスト・サトー(著書「一外交官の見た明治維新」)等。時代のこぼれ話みたいな感じです。

三つ目は「喧嘩草雲」。これも幕末ですが、上記二つと趣が違います。江戸で絵師をやりながらも、どうにも精気を持て余し気味で暴れ者の草雲の以外な変転を描きます。喧嘩だとか乱暴だとか言うと、痛快な小説だと思われそうですが、草雲の妻・お菊への一途な想いが、この作品を味わいのある作品に仕上げています。結構、良作です。

四つ目は「馬上少年過ぐ」。伊達政宗の苦汁に満ちた生涯を描いています。生母に激しく憎まれたり、人質にとられた実の父を犯人ごと射殺したりと戦国の奥州の梟雄の苦汁を描きます。
…その政宗は晩年、詩にこんな詩をつくります。

馬上少年過ぐ 
世平らかにして白髪多し
残躯天の赦すところ
楽しまざるをこれ如何せん

戦国の世に遅く生まれ、ついに天下統一をできなかった政宗の詩です。

五話目は「重庵の転々」。伊予宇和島藩(仙台伊達家の分家)の草創の話です。山里で医業を施すに過ぎなかった一人の男の出世と変転を書きます。最後に彼がたどり着いたところとは・・・。

六話目は「城の怪」。大阪の陣が終わって戦が尽きたのちに、武芸で出世しようとする若者の亡霊退治の話ですが、最後は微妙な終わり方になっています。

七話目は「貂の皮」。参勤交代の折に行列の前に立ててゆく二本道具(槍)のさやに脇坂家は「貂の皮」をつけています。その由来・脇坂家の初代・脇坂甚内の生涯を描きます。良くまとまっていて、いい仕上がりの短編です。

全体的に、司馬節が効いていて、読み心地が良いです。一読を。
(評価:4)
歴史の中を一生懸命生きた人々
レビュアー: shiba-ryo.com
2005-05-20
・幕末の長岡藩で非凡の才を発揮しつつも時勢を見極められずに散った河井継之助を描いた「英雄児」
・英国人殺害事件に関与した海援隊隊士菅野覚兵衛と佐々木栄を中心に幕末の日英関係を描いた「慶応長崎事件」
・江戸末期から明治初期を生きた、非凡の才を持った血気盛んな絵師、田崎草雲の生涯「喧嘩草雲」
・奥州の覇者正宗が歴史に残した足跡を、彼の持つ非凡な詩歌の才と共に描いた「馬上少年過ぐ」
・一介の町医者の身から伊予宇和島の命運を握るまでに栄達し、数奇な人生を送った山田重庵を描いた「重庵の転々」
・大阪の陣の後に武士になることを嘱望した大須賀満左衛門の奮闘を描く「城の怪」
・賤ヶ岳七本槍の武将として武名を轟かせた脇坂甚内(安治)の生涯を描いた「貂の皮」

これら7作からなる短編集です。
舞台となる時代も執筆した時期も違っているのでこれら7作には特に関連性はないと思いますが、個人的には「時代の流れの中で、個人が置かれた状況下で必死に生きた人物たち」という共通点があるようにも感じました。

収録作品数もページ数も少なめなので短時間で手軽に読み終われますが、司馬作品なので内容については太鼓判を押せます。
派手さはありませんが、歴史の中を一生懸命生きた人々の息遣いが感じられる、そんな一冊だと思います。


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