項羽と劉邦




読み:こううとりゅうほう
主な登場人物:項羽、劉邦
ジャンル:歴史小説
時代:春秋戦国時代(中国)
巻数:上中下

項羽と劉邦の熾烈な戦いを通じて中国、そしてアジアのルーツを描く大河長編

内容
(上)紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し戦国時代に終止符をうった。しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。――これは、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の猛将・項羽と天下を争って、百敗しつつもついに楚を破り漢帝国を樹立するまでをとおし、天下を制する”人望”とは何かをきわめつくした物語である。
(中)叔父・項梁の戦死後、反乱軍の全権を握った項羽は、鋸鹿の戦いで章邯将軍の率いる秦の主力軍を破った。一方、別働隊の劉邦は、そのすきに先んじて関中に入り函谷関を閉ざしてしまう。これに激怒した項羽は、一気に関中になだれこみ、劉邦を鴻門に呼びつけて殺そうとするが……。勇猛無比で行く所敵なしの項羽。戦さべただがその仁徳で将に恵まれた劉邦。いずれが天下を制するか?
(下)楚漢の天下争いは勝負がつかない。圧倒的な項羽軍の前に、穀倉のある山にのぼってこれと対峙する劉邦軍。やがて和議成って故郷に帰る項羽軍を劉邦は追撃し垓下に囲む。ある夜、包囲軍の中から楚の国の歌が湧き上がるのを聞いた項羽は、楚人はことごとく漢に降伏したかと嘆き、天が我を滅ぼしたことを知る。あらゆる人物の典型を描出しながら、絢爛たる史記の世界を甦らせた歴史大作。

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"項羽と劉邦"のレビュー

(評価:5)
乱世での才能、個性の輝き
レビュアー: shiba-ryo.com
2005-05-15
司馬作品としては珍しい、紀元前の古代中国を題材とした上中下の大作小説。「司馬遷に遼か遠く及ばない」というペンネームをつけていることからも、著者が司馬遷や中国史に対して敬意を払っていたことは間違いなく、その思いが小説の形となったのが本書なのかもしれません。

本書では項羽と劉邦による果てしない戦いを通して後の中国とそれを取り巻くアジア全体のルーツを描いており、四面楚歌、背水の陣などの現代でもなじみの深い故事成語の由来や、儒教、儀礼、侠気、義などの精神文化の起こりと発展が詳しく書かれていてとても勉強になります。

中でも印象に残ったのは本書に登場する多種多様な人間の存在です。項羽と劉邦をはじめとして、始皇帝、趙高、章邯、張良、韓信、蕭何、陳平、范増など、さまざまな才能や個性が登場することで、人間というものは一人として同じものはおらず、その個性は時に有益であり、時に害をなすということがよくわかります。

乱世は才能や個性が最も輝くときであり、その歴史を学ぶことは人間社会で生きていく上での大きな教訓となります。本書はそれが凝縮された、老若男女問わず価値がある珠玉の一冊だと思います。


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