幕末




読み:ばくまつ
収録作:桜田門外の変/奇妙なり八郎/花屋町の襲撃/猿ヶ辻の血闘/冷泉斬り/祇園囃子/土佐の夜雨/逃げの小五郎/死んでも死なぬ/彰義隊胸算用/浪華城焼打/最後の攘夷志士

桜田門外から鳥羽伏見まで、幕末期の暗殺や討ち入りなどを列伝形式で描いた短編集

内容
歴史はときに、血を欲した。このましくないがい、暗殺者も、その兇手に斃れた死骸も、ともにわれわれの歴史的遺産である。そういう眼で、幕末におこった暗殺事件を見なおしてみた。(あとがきより)万延元年三月三日朝、江戸城桜田門外で、春の雪を血で染めた大老井伊直弼襲撃など、十二の事件に幕末狂爛の時代を描く連作小説。

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"幕末"のレビュー

(評価:5)
激動の時代が生む悲劇と凶行
レビュアー: shiba-ryo.com
2005-05-22
幕末に起こった暗殺や討ち入りなどを列伝形式で描いた短編集で、幕末の始まりとされる「桜田門外の変」から、鳥羽伏見後の「最後の攘夷志士」までの全12編が収められています。
通常暗殺者などは歴史上ほとんど評価されない存在だと思いますが、本作では彼らを主人公として扱い、そしてその生活や心理を細かく描写しているので、凶行に至るまでの過程とその結末を詳しく知ることができます。

激動の時代が生みだす巨大なエネルギーのひとつの形が暗殺や討ち入りという行動であり、そしてそこから生まれるドラマもやはりエネルギーに満ちています。著者は「暗殺や討ち入りなどは絶対に許されないことだ」と言っていますが、やはり歴史が生み出すドラマというものは本当におもしろいと思います。

なお、個人的に特におもしろいと思ったのが、若き日の伊藤博文と井上馨を描いた「死んでも死なぬ」でした。後に明治政府の重職を務めた二人なので重厚な青年時代をイメージしますが、それを全く感じさせない若さと勢いから来る"生命力"があり、そのギャップがとてもおもしろかったです。

本作は、司馬作品特有の激動の時代が生み出すドラマを味わえる名作だと思います。あまりメジャーな作品ではありませんが一読の価値有りです。


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