坂の上の雲




読み:さかのうえのくも
主人公:秋山真之、秋山好古、正岡子規
ジャンル:歴史小説
時代:明治
巻数:1~8

明治日本の命運を決した日露戦争。勝利までの長い道のりを、秋山好古・真之兄弟を軸に描いた感動の長編


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内容
(一)明治維新をとげ、近代国家の仲間入りをした日本は、息せき切って先進国に追いつこうとしていた。この時期を生きた四国松山出身の三人の男たち――日露戦争においてコサック騎兵を破った秋山好古、日本海海戦の参謀秋山真之兄弟と文学の世界に巨大な足跡を遺した正岡子規を中心に、昂揚の時代・明治の群像を描く長篇小説全八冊。
(二)戦争が勃発した…。世界を吹き荒れる帝国主義の嵐は、維新からわずか二十数年の小国を根底からゆさぶり、日本は朝鮮をめぐって大国「清」と交戦状態に突入する。陸軍少佐秋山好古は騎兵を率い、海軍少尉真之も洋上に出撃した。一方正岡子規は胸を病みながらも近代短歌・俳句を確立しようと、旧弊な勢力との対決を決意する。
(三)日清戦争から十年―じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。しかし、両国の激突はもはや避けえない。病の床で数々の偉業をなしとげた正岡子規は戦争の足音を聞きつつ燃えつきるようにして、逝った。
(四)明治三十七年二月、日露は戦端を開いた。豊富な兵力を持つ大国に挑んだ、戦費もろくに調達できぬ小国…。少将秋山好古の属する第二軍は遼東半島に上陸した直後から、苦戦の連続であった。また連合艦隊の参謀・少佐真之も堅い砲台群でよろわれた旅順港に潜む敵艦隊に苦慮を重ねる。緒戦から予断を許さない状況が現出した。
(五)強靱な旅順要塞の攻撃を担当した第三軍は、鉄壁を正面から攻めておびただしい血を流しつづけた。一方、ロシアの大艦隊が、東洋に向かってヨーロッパを発航した。これが日本近海に姿を現わせば、いま旅順港深く息をひそめている敵艦隊も再び勢いをえるだろう。それはこの国の滅亡を意味する。が、要塞は依然として陥ちない。
(六)作戦の転換が効を奏して、旅順は陥落した。だが兵力の消耗は日々深刻であった。北で警鐘が鳴る。満州の野でかろうじて持ちこたえ冬ごもりしている日本軍に対し、凍てつく大地を轟かせ、ロシアの攻勢が始まった。左翼を守備する秋山好古支隊に巨大な圧力がのしかかった。やせ細った防御陣地は蹂躪され、壊滅の危機が迫った。
(七)各地の会戦できわどい勝利を得はしたものの、日本の戦闘能力は目にみえて衰えていった。補充すべき兵は底をついている。そのとぼしい兵力をかき集めて、ロシア軍が腰をすえる奉天を包囲撃滅しようと、日本軍は捨て身の大攻勢に転じた。だが、果然、逆襲されて日本軍は処々で寸断され、時には敗走するという苦況に陥った。
(八)本日天気晴朗ナレドモ浪高シ―明治三十八年五月二十七日早朝、日本海の濛気の中にロシア帝国の威信をかけたバルチック大艦隊がついにその姿を現わした。国家の命運を背負って戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。大海戦の火蓋が今切られようとしている。感動の完結篇。巻末に「あとがき集」他を収む。

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"坂の上の雲"のレビュー

(評価:5)
東郷平八郎
レビュアー: こいさん
2012-01-16
40才代の10年をかけただけの価値ある作品である。旅順、奉天での戦闘場面を読んでいると、かなり辛いが最後のバルチック艦隊との日本海海戦は完勝であっただけに読んでいてやはり嬉しい。司馬遼太郎記念館の中に大きな世界地図がある、そこにバルチック艦隊のたどった航路の表示があり、その両側に東郷平八郎の書の掛け軸がある、すごい気迫溢れる字で「敵艦見ゆとの警報に接し聯合艦隊は直に出動之を撃滅せんとす、本日天気晴朗なれども波高し」ともう一つは「皇国の興廃此の一戦に在り。各員一層奮励努力せよ。」です。是非とも写真に撮りたいところだが館内は撮影禁止で残念だった。
(評価:5)
旅順について
レビュアー: shiba-ryo
2009-09-14
旅順のくだりは、読んでいて辛い。

旅順攻囲戦における日本軍の死傷者は約6万人。この数はその後の奉天会戦に比べると少ないのだが、旅順においてはほとんどが無駄死であり、しかも司令部と大本営の無能の犠牲になったという点が悲惨さを増している。

しかも司馬遼太郎の戦場の描写が非常にリアルで、まるで自分がそこにいるかのような感覚になってしまう。
自分の祖先たちが旅順という巨大要塞に対し、必敗の方程式である絶望的な白兵突撃を繰り返し、ロシア軍の火器の前で無惨に殺されていく。
その様子を思うと、戦慄し、いてもたってもいられない気持ちになってしまう。

唯一の救いは、旅順の英霊たちが「祖国のため」に死んでいったことだろうか。自分の死は祖国のためであり、決して無駄ではないと信じて死んでいったと信じたい。その魂は今も靖国で安らかに眠っていると思いたい。



正直、旅順はきつい。読んでいて思わず気分が悪くなってしまうほどだ。

けれど、この旅順にこそ日本の国家、民族の痼疾があり、直視しなくてはいけない点だと思う。


この旅順において発揮される日本の民族性は、現代でも濃厚に受け継がれている。


「旅順では、無能な上官のために、兵士たちの命が犠牲になった。」

「現代日本では、無能な上司のために、部下たちが時間と体力を犠牲にしている。」


人の命が失われてない(過労死というケースはあるが)という点をのぞけば、やっていることはまったく同じだ。

上司の命令が絶対であり、「みんながやってるから」「気合いだ、根性だ」など、論理性のカケラもない理由を疑うことなく、ひたすら従順であり続ける。


また、日露戦争における信賞必罰がうやむやになったことに象徴される、問題における責任の所在を明確にしない傾向があるという点も、現代において何ら変わっていない。

さらに戦後に乃木が軍神として称えらるなど、国家レベルで冷静さを欠き、壮大な"空気の読み違い"をしてしまったことも含めて日本の民族性を考えさせられる。


こうした日本人の精神性は、短所でもあり長所でもあるので、一概に良いとか悪いとか言うことはできない。

が、少なくとも自分は疑問を持っており、持つようにしたいと思っている。

個としての自分を、そして民族としての日本を自覚し、常に冷静に、客観的にこの民族を見つめられる姿勢を身につけること。そして必要のない犠牲を防ぐこと。それこそが、旅順で死んでいった英霊たちの供養になるのではないかと思う。
(評価:5)
教育について
レビュアー: shiba-ryo
2009-09-14
坂の上の雲では、おもに序盤、秋山兄弟と子規の幼少から青年期を通じ、明治初期の庶民の気風や国家の諸制度を描いている。特に教育について詳しく描かれており、明治日本が国をあげて教育に力を入れていた様子がよくわかる。

土地も狭く資源もない、米と絹以外にこれといった産業もない日本。あるのはただ人のみ。
そんな極東の小国日本が、ヨーロッパ文明という未知の世界に飛び込み、列強の侵略を防いで独立を守り、いずれは文明諸国の仲間入りを果たすという大目標(つまり、坂の上の雲)を追うためには、とにかく勉強しかない。

その姿勢が庶民のレベルまで浸透し、個々の教育熱、立身出世への情熱などが集合して国家の力の源泉となる。

維新の混乱を経たにもかかわらず、日本が若く、初々しく、エネルギーにあふれた国家たりえたのはそうした明確なビジョンがあったからで、明治日本の集大成となった日露戦争を勝利に導いたその土台は、間違いなく教育だったと思う。


特にそれを感じさせるのが、日露戦争の主役が信長やナポレオンといった偶然の産物である"天才"でなく、計画して育成された必然の産物である"秀才"たちであり、かれらに任務をあたえ、急激な近代化と日露戦争の勝利という目的を達成したという点だ。
つまり日本は国をあげて30カ年の教育を中心としたプロジェクトに取り組み、それを成功させたと言ってよく、これは世界レベルで見ても非常に稀な偉業だったのではないかと思う。


そして100年後の今日、ゆとり教育や学力テスト結果の開示禁止など、教育を軽視する姿勢が見られるようになってきた。
また日の丸掲揚や国家斉唱を拒否をして、愛国心を否定する動きも出てきている。

こうした教育方針は、国家として、そして個人としてのエネルギーを失わせる結果になるだけだと思っている。


今後の日本がどうなるのかはわからないが、ひとつ確かなのは

「日本の唯一の資源は人であり、人を育てるのは教育しかない。」

ということだと思う。
司馬遼太郎はそのことは明言はしていないが、坂の上の雲にはそうしたメッセージが、具体的な成功例とともに込められていると感じた。
(評価:5)
大和日本が初めて輝いた瞬間
レビュアー: サカキバラ
2005-08-24
「日本」と言うのは、無土器時代~弥生時代になって、ムラ単位・クニ単位の考えが生まれ、大和朝廷によって統一され、武士が生まれて幕府に三度もまとめられながら、その間「世界史」に名を連ねた事は殆ど在りませんでした。

 日清・日露戦争とは初めて日本が世界情勢を一変させた時でした。
それだけに日本は慎重に作戦を練り、日本は世界中の国に、
「ロシアに勝った」
と思い込ませるだけの敢闘をしつつ、資金と兵力をやりくりし、外交のほうにも手を向けて講和の機会も見定める。
 まさに国家が綱渡りのような緊張の中で、危なっかしくも、何とか間違わずに進んでいったのです。

 これは戦争を美化し称賛する程退屈な本では在りません。
 このようなプロジェクトを見事遂行した、先人たちを鋭く爽やかに描ききった小説なのです。

 読み終えたあと、束の間静かな感動に包まれます。
 そして日本人をいとおしく思うでしょう。

(評価:5)
日本人としての誇り
レビュアー: shiba-ryo.com
2005-05-15
僕がこの長編歴史小説を読んで得た一番大きな収穫は、「日本人としての誇り」を持てたことだと思います。

国家と民族の尊厳を守るため、戦争という巨大プロジェクトを完璧なまでに遂行してロシアから勝利を得たという事実にただただ素直に感動し、そして自分がそれを成し遂げた明治人たちの子孫であることを誇りに思いました。

読む人によって感じることはさまざまだと思います。が、この明治の偉大な軌跡から学ぶことは本当にかけがえがないものです。
ぜひ一人でも多くの人がこの小説を読み、大きな何かを感じることを願います。


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