春灯雑記




読み:しゅんとうざっき
ジャンル:エッセイ
収録作:心と形/護貞氏の話――肥後細川家のことども/仄かなスコットランド/踏み出しますか/義務について

内容
「春のともしびは、靄気に滲んで、輪郭がぼやけている。この本もおよそそんなものだとおもってくだされば、気が楽である」。脳死と臓器移植と宗教観、国際社会と日本の歩む道―。今日的な問題から歴史の深い襞に踏み込んで、日本の精神風土を見つめ直す濃密な長編エッセイ5編。

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"春灯雑記"のレビュー

(評価:4)
いつまでも子供ではいられない
レビュアー: shiba-ryo
2011-08-22
すでに休刊した月刊Asahiという雑誌に掲載されたエッセイや講演録をまとめた作品。
収録5作品には特に関連性はありませんが、それぞれの編はそこそこにボリュームがあり、なかなか読み応えがあります。

特に印象に残ったのは「踏み出しますか」という講演の記録。

簡単にまとめると、『日本はすでに世界二位(今は三位ですが)の経済大国であり、国際社会という"組合"において日本が期待され、果たすべき役割は大きくなっている。その責任を果たすため、日本は経済だけでなく、国家と国民が成熟した大人にならなければいけない。だが現実にはまだ中学生くらいの子供であり、そのことを嘆き、心配している。』という内容です。

この講演は1991年に行われたものです。
その後20年経ちましたが、日本も日本国民も、まだまだ大人になったとは言えなさそうです。

さらに中国というこれまた大きな子供が登場し、大人だった欧米が徐々に力を失っていくことで、国際社会は混沌としてきています。

次の編の「義務について」にも続くのですが、司馬遼太郎は、日本を含む各国が大人の対応をする、つまり高い倫理を持ってそれぞれの義務を果たすことが、民主主義、資本主義という枠組みを維持していく上で必要不可欠だ、という語っています。

が、現実はそうはいかず、特に最近では政治家や経営者など、リーダーたちのモラルの低下が顕著に現れています。

このままモラルの低下が続けば、司馬遼太郎の言うように民主主義と資本主義が凶器となり、人類を傷つけることになるのではないか、漠然とした不安を感じてしまいます。


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