ロシアについて




読み:ろしあについて
ジャンル:エッセイ集
収録作:ロシアの特異性について/シビル汗の壁/海のシベリア/カムチャッカの寒村の大砲/湖と高原の運命

内容
この巨大な隣国をどう理解するか。長年にわたりロシアに対して、深い関心を持ち続けてきた著者が、おもに日露関係史の中から鮮やなロシア像を抽出し、将来への道を模索した、示唆に富む好著。

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"ロシアについて"へのトラックバック(1件)
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  1. The Intelligent Investor より:

    司馬遼太郎とアメリカとロシア
     さて、いまだに司馬遼太郎の本が読み尽くせません。ときどき合間をみて何冊か読んでますが、作品数が多すぎて全部を読み尽くすのは難しそうです。とりあえず最近読……

"ロシアについて"のレビュー

(評価:5)
『ロシアについて (北方の原形)』 考
レビュアー: sonja_oresh
2008-05-24
司馬遼太郎氏が語るコサックの東方遠征は、ソヴェト映画 『シベリア物語』 の中で演奏されるオラトリオ「シベリア物語」がバックに流れる中で映し出される、コサックによるシベリア征服の映像をほうふつとさせる。 また、この時代のロシアのすばらしい平衡能力、良心的世論が存在したロシア国家の良質さ、苛酷な漢族商人から「本然的ないたわり」のあるロシアへ逃れたモンゴル人たちのことなど、氏のロシアに対する好意的な語り口は、「ロシア大好き爺々」を自認する私には、とても心地よい。
特に、幕末鎖国下の日本に開国を迫るために相前後して来航した、アメリカ合衆国のペリーと、クルーゼンシュテルン、ゴローニン、プチャーチンたちロシア帝国の海軍軍人との人物比較は面白い。

「これについては、のちの世のアメリカのペリーの乱暴さを連想すべきである。 ・・・
当時、アメリカの捕鯨業界は日本に寄港地をもとめていた。 が、日本は鎖国をしていた。 これを開国させるべく、捕鯨業界はロビィストを使って議会に働きかけ、やがてペリーとその艦隊を派遣させることになる。 ペリーが、そういう、いわば卑しいとまでいえるほどの実利的な背景でもって日本に来ながら、変にたかだかと高邁な顔をしていたのは気にくわない。」(141ページ)

さらに氏は続けて語る。
「ペリーはもともと恫喝と威嚇こそ東洋人相手には有効だと認識し、その方針でやってきて始終つらぬいた。 ペリーは成功したが、品性のわるさを歴史に記録させた。 ・・・これに対し、プチャーチンは、対日折衝においてはできるだけ丁寧にという訓令どおりに最後まで柔和にふるまった。」 (168ページ)

司馬遼太郎氏のペリー評はまことに痛烈で、ペリーの人間性をして「傲岸と卑屈は、しばしば紙の表裏であるという一例」と談じている。 ペリー提督閣下もまったく形無しである。「品性のわるさ」 を言われては、武人として、これ以上の不名誉はあるまい。

しかし、何はともあれ、この作品の中で司馬遼太郎氏の語る日露交渉史は、シベリア産のエネルギー需給の関係など、将来の両国の善隣関係のありようを示唆しているように思われる。

「はるか、カムチャツカ半島の西南方向の海上に横たわっている日本にこそシベリアの慢性的な課題を解決するものとして過大な期待をかけるようになった。」(218ページ)
(評価:5)
ロシアの"原形"
レビュアー: shiba-ryo.com
2006-05-27
ロシアの民族・国家・歴史を、ロシアの視点から描いた作品。
ロシアの成立から現在に至るまでが詳しく、わかりやすく描かれており、純粋に歴史エッセイとして読んでも十分楽しめます。
そしてそれ以上に、"ロシアの立場で歴史を考える"ということによってもたらされるパラダイムシフトが印象的でした。

日本とロシア。ゴローニン事件、日露戦争、シベリア抑留、北方領土問題など、この二国の間には"作用・反作用の繰り返し"によって重く、暗い歴史が積み重ねられてしまっています。
こうした微妙な関係について、司馬遼太郎は「互いの国家の"原形"を知っておき、その上で相互の利害をさぐりあうべき」と語っています。

言い換えれば、相互の無理解によって悲惨な歴史を作り出してしまったわけであり、それはもう二度と繰り返してはいけない、ということだと思います。
"相互理解"。ごくごく当たり前のことだと思いますが、誰よりも日本、そしてロシアの歴史を知り、深く考えた司馬遼太郎が導き出した結論として、とても印象に残りました。

ロシア史に、そして日露関係に興味がある人はぜひ一読すべき一冊です。


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