街道をゆく (30) 愛蘭土紀行I




読み:あいるらんどきこう
ジャンル:紀行文

内容
愛蘭土。その島は、イギリスの本島であるブリテン島の西に、寄りそうように浮かんでいる。その可愛い島に行くには道が遠い。ともかくも、古代ローマがやって来なかった、という認識から出発せざるをえない。いまでも、「シーザーも来なかった島」という言い方がある(本文より)

タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , ,

関連ページ

"街道をゆく (30) 愛蘭土紀行I"へのトラックバック(0件)
トラックバックURL:

"街道をゆく (30) 愛蘭土紀行I"のレビュー

(評価:5)
妖精のいる国
レビュアー: shiba-ryo
2010-03-05
アイルランド島は司馬遼太郎が若い時から行ってみたいと願っていた場所の1つ。
かなり思い入れがあるようなので、期待しながらページをめくった。


この第I巻では約半分が英国での滞在記に費やされており、英国紀行として見てもとてもおもしろく、クオリティが高い。

まずヒースロー空港に降り立ち、ロンドンで英国に触れ、鉄道で移動しつつ産業革命を考える。
リバプールでは、ビートルズに代表されるアイルランド系英国人から、アイルランドという国と民族を、さらにイングランドとアイルランドの長きにわたる支配・被支配の構図まで踏み込んで、深く考えている。


アイルランドは、その全人口に対して輩出する芸術家の数がとても多い。

司馬遼太郎はアイルランドを「妖精がいる国」と評している。
一神教であるキリスト教(ローマ・カトリック)による、土俗宗教や風習への締め付けが緩やかだったため、他のヨーロッパ諸国とちがって土俗の神や妖精が生き残り、それが創造性を育み、多くの芸術家を産む土壌になったと言う。この点は八百万の神がいる日本に住む者として親しみを感じる。


また自分にとって印象的だったのは、ビートルズのメンバーのうち3人がアイルランド系だったということ。
ジョン、リンゴ、ジョージがアイルランド系で、ポールがスコットランド系らしい(McCartneyはスコットランドに多い姓)。
さらにビートルズを見出したマネージャーのブライアン・エプスタインはユダヤ系。

これまで「英国のロックグループ」という括りでしか見ていなかったビートルズも、『アイルランド系の天才ミュージシャンの原石を、商売上手でセンスのあるユダヤ人が発見して磨き上げ、英国人が鑑賞し、評価した』という見方をすると、非常におもしろい。


またビートルズ以外にも著名人は多く、アイルランド系アメリカ人まで含めるときりがないほど。以下、本書に出ているだけでも知っている名前が多い。


ジョナサン・スウィフト(ガリバー旅行記の著者)
ジェイムズ・ジョイス(ダブリン市民、ユリシーズの著者)
ジョン・F・ケネディ
ロナルド・レーガン
ハリー・キャラハン(映画『ダーティ・ハリー』の主人公。演じるクリント・イーストウッドもアイルランド系)
スカーレット・オハラ(映画『風と共に去りぬ』の主人公)
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)


第II巻ではアイルランド島西部にまで足を伸ばし、彼らの故郷を紀行する。


レビューを投稿する